『公務員は副業禁止』と思われていますが、一概に禁止というわけではなく、禁止されるもの、許可を得れば認められるもの、そもそも副業にはあたらないものなど、その内容により基準や制限が定められています。
YouTube配信による収入や、ネット転売での収入なども、収入があるということだけでは判断されず、収入金額や反復性、規模などによって、制限を受ける行為かどうかが判断されます。
今回は、国家公務員を例により、副業制限の基準がどのようになっているかを解説します。
まずは「兼業にあたるかどうか」をチェック
公務員における副業は「兼業」と呼ばれ、国家公務員の場合、国家公務員法や人事院規則でいろいろと定められています。
国家公務員がなにか副業をやろうとしたとき、まずは人事院規則における「兼業」にあたる行為かどうかを確認する必要があります。
兼業にあたる行為であれば制限を受けますが、兼業にあたらない行為であれば制限を受けません。
- 兼業にあたる行為なら『制限あり』
- 兼業にあたらない行為なら『制限なし』
ただし、兼業にあたらない行為でも、信用失墜行為の禁止等、別の規則により制限される場合があるので、「なんでも自由にやってOK」というわけではない。
国家公務員の「3つの兼業」
次に、兼業にあたる行為であった場合、その兼業は「役員兼業」「自営兼業」「その他の兼業」のいずれかに分類されます。
国家公務員の3つの兼業
- 役員兼業
- 自営兼業
- その他の兼業
どの兼業にあたるかで、制限の内容が異なります。
役員兼業
役員兼業は、営利企業の役員になることを指します。
これは人事院規則で禁止されている行為です。
なお、報酬を得ずに名義だけ役員になっているという場合も禁止です。
自営兼業
自営兼業は、「自営業をしている」とみなされる行為を指します。これは、原則は禁止ですすが、許可を得た場合は可能となる場合もあります。
自営兼業にあたるかどうかは、その行為による収入の有無やその金額、規模等によって判断され、自営業をしているとみなされるかどうかによりますが、一部の行為には一定の基準が示されています。
なお、事業の名義が職員本人でなく他人名義であっても、実質的に事業を行っているのが職員本人であれば、兼業の制限を受けます。
「自営兼業」にあたる行為
次の行為には、自営兼業とみなされる一定の基準があります。基準を超える場合、許可を得る必要があります。基準を下回っていれば、自営兼業とはみなされないため、制限を受けず、許可を得る必要もありません。
なお、これらに該当しない行為は、明確な基準がないため、自営業にあたるかどうかは個別に判断されます。
判断にあたっては、「公務員職と事業との間に利害関係がないこと」「職務に支障がないこと」「公務の公平性、信頼性の確保に支障がないこと」などが基準となります。
自営兼業が認められるかどうかの判断基準
- 収入の有無や金額
- 事業の規模
- 公務員職との間の利害関係
- 職務や公務員の信頼性への支障 など
不動産賃貸の基準
不動産や駐車場の賃貸収入は、以下のいずれかの基準を超えると自営兼業と判断され、許可を得なければいけません。
自営兼業とみなされる不動産賃貸等の基準
- 独立家屋5棟以上
- アパート10室以上
- 土地10件以上
- 台数10台以上の駐車場
- 建築物など設備を設けた駐車場
- 娯楽施設、旅館など業務用の不動産
- すべての賃料収入の合計が年500万円以上
いずれかの基準を満たすと自営兼業になり許可を得る必要あり
農業・太陽光電気の販売等
農業等
大規模に経営され客観的に営利を主目的とすると判断される場合、許可を得る必要があります。
太陽光電気の販売
太陽光発電設備の定格出力が10キロワット以上である場合、許可を得る必要があります。
その他
その他にも、以下のような行為には、人事院による一定の見解が示されています。
著作や音楽など制作物から発生する報酬
兼業にあたらない場合
- 公務員になる前に制作したもので、現在は活動していない場合
- 単発的に制作し報酬が発生したもの など
兼業にあたる可能性がある場合
- 制作により事業を営んでいると判断される場合
- 依頼を受けて継続的に制作し、継続的に報酬を得ている場合
- 自ら企業等に売り込んでいる など
YouTube、ブログなどのアフィリエイト収入
アフィリエイト収入を得ているだけでは兼業とは判断されません。
目的(営利目的かどうか)、投稿の継続性、反復性の有無、規模等によっては許可が必要な兼業になる可能性があります。
ネット転売
自己がたまたま所有しているものを出品する程度は兼業にはあたりません。
物品を多数購入し、定期的に出品している場合などは、許可が必要な兼業になる可能性があります。
株式の所有、売買の収入
資産運用としての売買は兼業にはあたりません。
ただし、発行済株式総数の3分の1を超えて、行政上の権限の行使ができる会社の株を取得するなど、制限や報告義務がある場合があります。
その他の兼業
役員兼業でもなく、自営兼業でもないものは、「その他の兼業」として制限されます。
その他の兼業は、まず「報酬の有無」と「継続的又は定期的に従事するかどうか」で、ある程度判断されます。
原則として、報酬を得て、継続的又は定期的に従事する場合は許可を得る必要があります。
なお、兼業が認められるのは非営利団体や大学での勤務のみとされ、営利企業での兼業は原則認められません。
そのほか、利害関係がないことや、報酬が社会通念上相当と認められる範囲内であること、兼業によって公務に支障がないこと、原則として兼業時間数が週8時間以下、1ヶ月30時間以下、平日は3時間以下であることなどが判断基準とされます。
その他の兼業の基準
- 報酬を得て継続的又は定期的に従事するものは兼業
- 報酬がないものや、あっても単発的な講演等による報酬であれば兼業ではない
※報酬には、交通費などの実費弁償は含まない
※兼業でなくても、他の規則により承認が必要なケースもある
「その他の兼業」の許可の判断基準
- 営利企業でない
- 利害関係がない
- 報酬が社会通念上相当と認められる範囲内
- 兼業によって公務に支障がない
- 兼業時間数が原則週8時間以下、月30時間以下、平日3時間以下 など
地方公務員の兼業制限
ここまでは国家公務員の例を示しましたが、地方公務員の場合を解説します。
地方公務員の場合、地方公務員法第38条により営利企業への従事等の制限がされていますが、「任命権者の許可を得なければ禁止」とされているため、その団体の任命権者(首長など)の基準によって、なにがOKでなにがダメかが決まることになります。
地方公務員法38条(営利企業への従事等の制限)
1 職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業(以下この項及び次条第1項において「営利企業」という。)を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事院規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては。地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
2 人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる。
このように、それぞれの団体で許可の基準を設けることができるため、認められるかどうかは、それぞれの団体の人事部門に確認しないと分かりません。
ただし、明確な基準を定めていないか、あっても人事院規則と同様の内容としている団体が多いと思われるため、結果的に、国家公務員と同じ基準で兼業が制限されているケースが多いように感じます。
非常勤職員は兼業規制の対象外
最後に、ここまで国家公務員、地方公務員の正規職員の兼業制限について解説しましたが、非常勤職員については、兼業規制の対象外となっています。
まとめ
まずは「兼業にあたる」か「兼業にあたらないか」をチェック!
「役員兼業」は禁止。「自営兼業」「その他の兼業」は許可が必要。
営利団体への従事は原則禁止。非営利団体への従事は許可を受ければ可能。
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