この記事では公務員の副業制限と、公務員のあなたもできるかもしれない副業についてご紹介します。
公務員の義務と禁止事項
副業について知る前に、まず「公務員の義務と禁止事項」をおさらいしておきます。
公務員の義務と禁止事項(国家公務員法の例 ※地方公務員も基本的には同じです。)
法令及び上司の命令に従う義務(国公法第 98 条第1項) | 法令に従い、且つ、上司の職務上の命令に忠実に従わなければならない。 |
争議行為等の禁止(国公法第 98 条第2項) | いわゆるストライキなどをしてはいけない。 |
信用失墜行為の禁止(国公法第 99条) | 公私にわたり非違行為をしてはいけない。 |
守秘義務(国公法第 100条) | 職務上知ることのできた秘密を漏らしてはいけない。退職後も同様。 |
職務に専念する義務(国公法第 100条) | 勤務時間中は原則として職務遂行に関係ない行為をしてはいけない。 |
政治的行為の制限(国公法第 102条) | 特定の政党を支持・反対する文書を配布するなどの政治的行為をしてはいけない。 |
私企業からの隔離(国公法第 103条) | 営利企業の役員を兼ね、又は自ら営利企業を営んではいけない。(役員兼業の禁止・自営兼業の制限) |
他の事業又は事務への関与制限(国公法第 104条) | 報酬を得て兼業を行う場合には許可を要する。(上記103条以外の兼業を行う場合) |
これら禁止事項に抵触した場合は、副業うんぬん以前にアウトです。
こういうのは許可があってもダメです。
違反した場合、刑事罰や懲戒処分の対象となります。
副業に関する決まり
以下の2つが「副業に関する決まり」になります。
私企業からの隔離(国公法第 103条) | 営利企業の役員を兼ね、又は自ら営利企業を営んではいけない。(役員兼業の禁止・自営兼業の制限) |
他の事業又は事務への関与制限(国公法第 104条) | 報酬を得て兼業を行う場合には許可を要する。(上記103条以外の兼業を行う場合) |
公務員の副業に関する法律上の決まりは…
国家公務員
私企業からの隔離(国公法103条)
他の事業又は事務への関与制限(国公法104条)
地方公務員
営利企業等の従事制限(地公法38条)
公務員は「副業禁止」ではなく「兼業許可制」
副業に関する決まりは「禁止」ではなく「制限」となっています。
営利企業等の従事制限(地方公務員法第38条)を例にすると、
地方公務員法第38条第1項
職員は、任命権者の許可を受けなければ、営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則(人事委員会を置かない地方公共団体においては、地方公共団体の規則)で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利を目的とする私企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない。
要するに、任命権者の許可という制限つきで、兼業を認めるということです。
このように、公務員の副業は「禁止」ではなく「兼業許可制」であると言われています。
公務員は「副業禁止」ではなく「兼業許可制」
しかし、この「兼業許可制」の基準が明確でなく、何が良くて何がダメなのか分からず、実質的に副業禁止状態となっているケースが多いです。
「公務員の副業は必要以上に抑制されている」「本来許可が必要ない活動まで制限されている」との見方もあります。
近年は、一部の自治体などで、この基準を明確にすることで公務員の副業を活性化させようとする動きも出てきています。(最後のほうでご紹介します。)
制限の対象となる「兼業」とは?
兼業の種類は3種類
公務員の兼業は、大きく3つに分けて規制されています。
3つの「兼業」
①役員兼業
②自営兼業
③報酬兼業
それぞれどのようなものか見ていきます。
① 役員兼業
営利を目的とする私企業・団体の役員(取締役、理事など)を兼ねること
「営利を目的とする私企業・団体」が対象となり、一般社団法人等の非営利団体は含まれないと解されます。
また、名義のみだったとしても、役員を兼ねているとみなされます。
② 自営兼業
自ら営利企業を営むこと
自営業のことです。
人事院によると、不動産・駐車場の賃貸、太陽光電気の販売、農業等は、次の基準を超えると自営業とされます。
不動産や駐車場の賃貸 | 独立家屋…5棟以上 アパート…10室以上 土地…10件以上 駐車台数…10台以上 もしくは賃貸収入年間500万円以上 等 |
太陽光発電の販売 | 発電設備の出力が10キロワット以上 |
農業等 | 大規模に経営され客観的に営利を目的とする企業と判断される場合 |
③ 報酬兼業
報酬を得て事業または事務に従事すること
①、②以外の、あらゆる有報酬兼業が該当します。(無報酬なら非該当)
人事院によると、具体的に以下の要件を満たすものとなっています。
労働の対価としての「報酬を得る」こと
労務等の対価の意味合いを持たない謝礼や実費弁償は該当しない。
定期的又は継続的に従事すること
単発的に講演を依頼され講演料を得た場合などは該当しない。
(ただし、金額などの条件によっては報告の義務がある。)
以上の3つが「兼業」にあたるものです。
これらに当たらない活動は「兼業」ではなく、そもそも制限の対象外なので、やっても大丈夫です。
公務員の「兼業」は大きく3つに分けて規制されている
① 役員兼業
② 自営兼業
③ 報酬兼業
許可がもらえる副業は?
制限を受ける「兼業」に該当した場合、許可を受ける必要があります。
その基準は、国家公務員、地方公務員で違いがあります。
国家公務員の場合
①役員兼業
報酬の有無を問わず認められない
国家公務員が営利企業・営利団体の役員を兼業することは、たとえ無報酬でも、名義だけでも、認められていません。
②自営兼業
原則禁止。ただし、次の基準を満たすもので承認を受ければ可能。
太陽光電気の販売 | 不動産や駐車場の賃貸・本業と兼業の間に利害関係がないこと ・管理業務を事業者や親族に委ねるなど、職務の遂行に支障が生じない事が明らかであること ・公務の公平性、信頼性が確保されていること |
その他の事業 | ・上記に加え、当該事業が相続、遺贈等による家業の継承であること |
フリマアプリでの商品販売
ネットオークション、フリマアプリでの商品販売は、営利を追求する目的でアカウントを取得するなどして店舗を設けたり、不特定多数への販売目的で大量に仕入れるなどして定期的、継続的に行えば、小売業として自営に該当するため制限の対象となる。(上の基準をクリアしていないと×)
③報酬兼業
職務専念義務、職務の公正な執行及び公務の信用の確保の観点から、支障がないと認められる場合に限り、許可を受けられる。
具体的には以下のようなものはNGです。
- 兼業のために時間をさくことにより、職務の遂行に支障が生じると認められる
- 兼業のために心身の疲労のため、職務遂行上その能率に悪影響を与える
- 職員の所属機関と兼業先との間に免許、認可、許可、検査、税の賦課、補助金の交付、工事の請負、物品の購入等の特殊な関係がある
- 兼業先の経営上の責任者になる
- 国家公務員としての信用を傷つけ、または官職全体の不名誉となる恐れがある
地方公務員の場合
地方公務員法では「任命権者の許可を得る」ことになっています。よって、結論はそれぞれの機関での判断、ということになります。
しかし、全国の地方公共団体のうち、何らかの基準を設定している団体は約4割で、その半分が対外的には公表していないそうです。
このように萎縮してしまったり、申請したとしても許可を出す側が明確に判断できず、本来許可を受ける必要のない活動までNOとしてしまったり、必要以上に制限されているケースもあります。
なお、基準が無い団体は、国家公務員の例にならって判断している事が多いと思われますが、国家公務員と地方公務員では多少違いがあります。
国家公務員との違いは…
国家公務員では禁止の役員兼業も、地方公務員では任命権者の許可制になっています。
おおまかな基準として…
地方公務員の許可基準として、おおまかですが一定の指針が国から示されています。
許可にあたって留意すべき点
能率の確保
×兼業による心身の著しい疲弊のため職務の能率に悪影響を与える
公正の確保
×兼業先と利害があるため職務の公正を確保できない
品位の保持
×報酬が社会通念上相当と認められる程度を超えるため公務の信用を損ねる
これらがクリアできない副業は、許可が受けられないと思っていいでしょう。
基準を明確にしている自治体の例
基準を明確にして公表している自治体の例を紹介します。
神戸市役所の例
対象となる活動
報酬を得て行う公益性の高い継続的な地域貢献活動
社会的課題の解決を目的とする活動等
主な許可要件
勤務成績が良好
勤務時間外での活動
許容できる範囲の報酬
過去5年間利害関係がない
営利目的でない
その他、不動産賃貸など、社会貢献活動以外も許可基準を明示しています。
そのほか「許可が必要な活動・いらない活動」を、国家公務員の例にならって示しているような団体もあります。
最初にお伝えした結論のとおり、許可をするかどうかは任命権者の判断です。ここまでお伝えしたような「許可をもらえそうな内容の兼業」だったとしても、任命権者の判断によってはダメとなります。
自分の団体にこのような基準があるかどうか、一度確認してみるとよいでしょう。
地方公務員は任命権者が判断する。主なポイントは次の3つ。
能率の確保
兼業で疲れてしまって仕事に影響がでてはダメ
公正の確保
兼業先と利害関係があったらダメ
品位の保持
常識外の報酬をもらっているとかはダメ
基準を明確に示してくれている団体もあるので確認してみよう!
兼業が許可されている地方公務員の数
地方公務員のうち、許可を受けて兼業している職員数は次のとおりです。
地方公務員の兼業の許可状況(平成30年度)
社会貢献的な活動 | その他の活動 | |
役員兼業 | 410人 | 1,926人 |
自営兼業 | 89人 | 2,158人 |
報酬兼業 | 11,007人 | 26,079人 |
(営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する実態調査より作成)
合計41,669人が許可を受けて兼業していることになります。
ちなみに投資は…
最後に、投資などの資産運用に関しては、自営業にあたるレベルでなければ問題ありませんので、ご安心ください。
ただし、勤務時間中にやるのはダメですよ!
おわりに
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(本記事の参考資料・出典)
■「営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する調査(勤務条件等に関する附帯調査)」の結果等について(通知)(令和2年1月10日付総務省自治行政局公務員部公務員課長通知)
■営利企業への従事等に係る任命権者の許可等に関する実態調査(平成31年)
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