この記事では、2023年の人事院勧告について解説します。
過去5年と比較して約10倍となる超大幅ベースアップのほか、週休3日の選択、兼業許可の検討など、公務員生活に影響する内容がたくさん盛り込まれていました。
いろいろ拡大する制度もありますので、今後の公務員生活に活かしていきましょう!
人事院勧告2023 給与改定関連
過去5年の平均と比較して約10倍のベースアップ
年収ベースで平均約3.3%の上昇
昨年からの物価高を受け、民間企業は大幅なベースアップを行いました。そのため、公務員と民間企業の給料の差は、平成9年以来、26年ぶりの大幅な差となりました。
これを受けて、今年度の給与勧告は以下のようになっています。
2023年の給与改定
- 初任給は1万円超の引き上げ
- 月給は平均1%、最大5%の引き上げ
- ボーナスは0.1 月分の引き上げ
初任給が1万円以上引き上げられるのは33年ぶりとのこと。
月給の引き上げも、最大5%とかなりの上昇ですが、若年層が中心です。残念ながら若年層以外はあまり上がりません。(それでも例年よりは高い上昇率となっています。)
ボーナスは、年間4.4月分から4.5月分に上昇。
年収ベースでは、平均約3.3%の給与改善となります。
それだけ物価が上がった、ということでもあるわけです。
人事院勧告2023 働き方関連
公務員の働き方に関連する勧告については、大きく分けて
- 人材確保
- 職員の成長の後押し
- 多様な働き方
の3つの柱がありますが、今後の具体的な取り組みを取り上げてみると、直接的に影響がありそうなものだけでも、こんなにありました!↓↓↓↓↓
令和5年度 人事管理に関する人事院勧告
- 民間人材等の積極採用・採用試験の見直し
- 初任給・採用時給与の処遇改善
- 若手・中堅の優秀者層の給与水準の引き上げ
- 特に優秀な職員の勤勉手当の成績率の上限引き上げ
- 兼業許可の検討
- 新幹線通勤時の通勤手当の適用・金額拡大
- 単身赴任手当の適用拡大
- 管理職給与を優秀者ほど大きく上がる仕組みに
- 管理職特別勤務手当の拡大
- 定年前再任用短時間勤務職員の諸手当拡大
- 「ゼロ割振り日(週休3日)」の適用拡大
- 勤務開始後でも勤務時間の割振り変更が可能に
- 勤務間インターバルの規定の創設
- 夏季休暇の使用可能期間を前後1ヶ月拡大
- 交代制勤務職員の年休取得単位を15分単位に
- 月3000円のテレワーク手当創設
- 子の介護休暇等の子育て関連制度の対象年齢拡大を検討
- 配偶者等の扶養手当を見直し・子の扶養手当を増額
実際の勧告の文章をご紹介します。
(以下、令和5年度人事院勧告「公務員人事管理に関する報告」より抜粋)
「民間人材等の積極採用・採用試験の見直し等」
国家的課題とも言える公務人材の確保は、今、危機的な状況に直面している。国家公務員採用試験の申込者数が減少傾向にある一方で、若年層職員の離職者数は増加傾向にある。公務の人員体制については年齢別人員構成に偏りがあり、現在、実務の中核を担うことが期待される30歳台から40歳台半ばまでの職員の数が、10年前と比較して大きく減少している。
公務組織を支える多様で有為な人材を確保するためには、採用試験を通じた新規学卒者等の確保・育成だけでは組織を維持することは難しく、民間企業等における多様な経験や高度な専門性を有する人材をより一層公務に誘致することが不可欠である。これを実現するためには採用手法、人材育成、給与等の在り方について一体的な取組を推進していく必要がある。
「若手・中堅の優秀者層の給与水準の引き上げ等」
近年、初任給や係員級に重点を置いて給与引上げを行ってきたが、若手・中堅の優秀者の給与の伸びは20歳台後半から30歳台にかけて鈍る傾向がある。また、令和2年度の公務員白書でも報告した公務職場に関する意識調査によれば、これらの年齢層の職員の給与の満足度が低い実態がある。こうした状況を踏まえ、係長級から本府省課長補佐級2について、それぞれの俸給額の最低水準を引き上げることにより、若手・中堅の優秀者層の給与水準を引き上げる。あわせて、勤勉手当については、勤務成績に応じて支給される仕組みとなっているが、現行では最優秀者の水準が最大でも平均支給月数の2倍であることから、特に高い業績を挙げた者に対してより高い水準の処遇が可能になるよう、特に優秀と評価される職員に対する勤勉手当の成績率の上限を引き上げる。
「兼業許可の検討」
民間企業において導入が進んでいる兼業には、本業と異なる経験をすることで労働者が主体的にキャリアを形成することができることや、自身の活躍の幅を広げ、自己実現を追求できること等のメリットがあるとされている。兼業による経験は本業へ好影響を及ぼすともされている。本院は自営兼業制度を所管しているが、これらのメリットは公務においても期待できると考えられるため、職員の健康への配慮のほか、職務専念義務、職務の公正な執行、国民の公務への信頼の確保の必要性を踏まえつつ、職員としての成長や組織のパフォーマンス向上等につながるような兼業の在り方について、各府省等の意見を聞きながら検討してく。
「ゼロ割振り日(週休3日)の適用拡大」
現行制度上では育児介護等職員に限り認められている、フレックスタイム制の活用により、勤務時間の総量を維持した上で、週1日を限度に勤務時間を割り振らない日を設定することができる措置を、一般の職員にも拡大することとするものである。
(夏季休暇・年次休暇)
業務の都合により当該期間内に夏季休暇を使用することが困難な職員について、当該期間を前後各1月の期間拡大し、休暇を使用することを可能とする。
年次休暇について、いわゆる交替制等勤務職員は、特別の形態による勤務時間の割振りがなされていることやフレックスタイム制が適用できないことなどから、現行の日単位及び時間単位のみの使用では、実質使用できる時間数について、他の職員よりも不利になる状況が生じている。こうした状況を踏まえ、交替制等勤務職員について、特に必要があると認められるときは、時間単位のみでなく、15分を単位として休暇を使用することを可能とする。これらの措置が令和6年1月から実施されるよう、人事院規則の改正を行う。
(子育て関連制度の対象年齢拡大の検討)
職員の希望や事情に応じた勤務を可能とするため、仕事と生活の両立を図る制度の充実に関しても、各府省等から要望が多く寄せられている。特に、育児に係る両立支援制度の対象となる子の年齢の引上げ(現在の小学校就学前までから小学校就学後まで)や、介護に係る制度を利用できる期間等の拡大についての要望が多い。本年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、「こども・子育て支援加速化プラン」の具体的政策として、残業免除や子の看護休暇の対象となるこどもの年齢の引上げの検討などが示されている。また、近年、育児のための両立支援制度を利用できる期間を延長する民間事業所が増える傾向にある本院としては、これらの状況を踏まえつつ、引き続き、仕事と生活の両立支援に必要な方策を検討し、両立支援制度の整備・周知等に取り組んでいく。
(扶養手当の見直し)
共働きの増加等を受けて、近年、公務において配偶者に係る扶養手当を受給する職員の割合、民間において配偶者に対し家族手当を支給する事業所の割合は、いずれも減少傾向にある。こうした状況を踏まえ、扶養手当については、配偶者等に係る手当を見直す一方、子に係る手当を増額する。
特に『兼業の在り方の検討』には期待したいです。
公務員の兼業は許可制となっていますが、基準があいまいで、実質禁止状態が続いていました。兼業、副業がどこまで認められるかは注目です。
公務員の兼業・副業についてはこちらで詳しく解説しています。
また、『扶養手当の見直し』については、しれっと書いてありましたが、「扶養の壁」に関する大きな見直しだと感じます。社会保険の扶養の廃止も議論されていますが、その布石なのでは?という気もします。
以上のように、人事院勧告は、公務員の給与や休暇など直接的に影響があるものだけでなく、現在の社会情勢や、国が考える今後の労働の在り方など、多様なメッセージを読み取ることができます。
しっかりアンテナをはって、ライフプランを考え、公務員生活を充実させていきましょう!
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